第27話 地球生まれの宇宙怪獣

監   督 市野 龍一
脚   本 前川 淳
特技監督 高野 敏幸
怪   獣 ザランガ

 怪獣の出産を助けるという至極簡単なお話ながら、とても面白く仕上がった作品です。ギャグ満載ってあたりは評価の分かれるところでしょうが、ギャグが嫌味にならず、作品全体のテンポをよくしていますから、私としては評価したいと思います。
 よくよく考えると、今回の作品、コスモスとザランガは全然戦っていませんし、破壊シーンも一切なし、んなもんですから、EYESや防衛軍による派手な攻撃もありません。それなのに、「もの足りなさ」ってのを感じないんですよね。

 「もの足りなさ」を感じなかったのは、見ているほうに人間社会に対する被害を予想させたからではないかな、と思います。「生命の輝き(第12話)」では、コンピュータ管理施設が壊されそうになってましたが、今回の場合は住宅地への被害です。生活に密着したモノに対しての被害を予想させていますから、見ているほうは常に緊張感を持っていられるんです。
 さらに緊張感を高めたのが、ザランガの体温上昇という要素。高熱になると、住宅地に近寄るだけで火災が発生しますし、ガスタンクに近寄るだけで引火の危険性が出てきますから、緊張感がますます高まるっていう寸法です。いや、ほんと小憎らしいつくりになってますよ。
 秀逸なのが、看板の自然発火の絵。この絵によって、私たちの脳みそに、住宅地の火災の危険性をさりげなく焼き付るという仕掛け。くそー、めちゃくちゃ上手な作り方だぞ。

 もっとも、体温上昇についてはそれなりにツッコミポイントはありますよ。わざわざ地球の海で体を冷やさなくても、宇宙空間は摂氏マイナス270度の世界ですし、氷に覆われた惑星もたくさんあります。また、看板が自然発火するほどの熱なのに、木々はおろか、地面も足跡部分しか焼けていませんしねぇ。つーか、あの熱ならエルニーニョ現象すら起きそうです。んでも、そんなツッコミポイントはあるにしても、緊張感が途絶えていませんから、そんなこともあまり気になりません。
 なんだかんだと「ウルトラマンコスモス」のメインテーマである、怪獣の保護と人間との共存をしっかりと表現した作品だったということでしょう。メインテーマから外れず、緊張感を持たせ、ギャグが満載だったということで、そりゃ面白いものになるのは分かりきってますわね。

 んじゃ、EYESの作戦はというと・・・今回もダメくさいなぁ。ザランガを引き上げるのにケーブル弾を使い、テックサンダー2機で引き上げようとしていましたが、引き上げるならドイガキ(須藤公一)でしょ。ほら、「怪獣一本釣り(第6話)」でモグルドンを引き上げたあのテクニック、ここで使って欲しかったなぁ。って、ここで引き上げに成功しちゃったら、後の話が続かない?
 海に誘導するっていう作戦もなぁ。そりゃザランガが火薬の匂いが嫌いっていうのを利用するのはオッケです。んでも、たった一発しか撃たないってのはどーよ。野次馬が打ち上げた花火の匂いで住宅地のほうに向きを変えたら、もう一発花火弾撃っちゃえば住宅地のほうに行くのも嫌がるでしょうにねぇ。てっか、シェパードで誘導しなくても、花火弾で海に追い込めばいいような気もしないでもないですが、どうなんでしょう。
 んで、今度はそのシェパード。こちらも行き当たりばったり作戦のおかげで大失敗です。怪獣誘導するんなら、予想進路の避難誘導とか、交通制限とかしとかなきゃダメでしょ。放映当初は、いろんな機関に作戦への協力を要請していましたけど、最近はまったくしなくなったんでしょうかねぇ(笑)。もっとも、こうやってハプニングが起きてくれないとコスモスの出番がなくなっちゃいますけどね。
 しかし、あんなに野次馬ともめていたフブキ(市瀬秀和)が、ザランガ親子が宇宙に帰る時にはしっかりと子供を肩車しているシーンは、さりげなくフブキの優しさを表現してたりして、なかなかグッドです。
 そうそう、先週もツっこんだけどさ、シェパードでトレジャーベースからあの街まで行ったのかなぁ。運転めちゃくちゃ疲れそうだ。

 満載されたギャグのほうは、見どころいっぱいでしたね。EYES隊員だけでなく、ザランガやコスモスまでギャグをやっちゃってます。ザランガがぶつかる時のコスモスの動きもギャグですし、ザランガの妊娠を知ったときのカラータイマーもめちゃくちゃギャグです。このカラータイマーのギャグも、評価の分かれるところなんでしょうが、コスモスを人間くさく描いたということで、私としてはマル。ウルトラマンにも感情があるわけですから、驚きの感情をうまく表現していたと思いますよ。ってよー、人間の感情に飽きたカオスヘッダーがコスモスの感情に興味持ったりして(笑)。
 んま、ギャグが満載された作品だったからこそ、このカラータイマーのギャグもあまり目立たなかったんだろうとは思います。そうしてみると、ギャグも上手に使いこなしていた作品だったのではないでしょうか。

 ザランガのギャグはというと・・・動き全体がギャグといってもいいくらいですね。めり込んだ地面から這い上がろうと、両手を横に振る動きもギャグですし、コスモスに引き上げられて西洋式の女性の礼をするあたりもしっかりとギャグ。私としては、この女性の礼も評価が高いです。ギャグの姿を借りてはいるものの、見ているほうに、見た目だけでは性別の分かりにくいザランガがメスであることを、印象付ける効果を持たせています。うーん、ここでもギャグの使い方のセンスがいいぞ。

 EYES隊員のギャグは主にアヤノ(鈴木繭菓)が担当。そのギャグに巻き込まれた感じのするヒウラ(嶋大輔)とのやり取りが面白いですねぇ。特に、テックサンダー発進前に、サングラスをかけようとしたギャグには大笑いさせていただきました。
 このアヤノ、何も考えていないように見せながら、その予想がすべてあたっていて、見ているほうをしっかりと裏切ってくれます。こうやってアヤノのキャラクターを生かした使い方っていうところも、ポイント高いですねぇ。
 んでも、「ぬくもりの記憶(第24話)」で、操縦席でマニュアル引っ張り出した割には、今回、サングラスかけようとしたり、きっちり花火弾を撃ったりと、余裕しゃくしゃくだったってのがちょっと気になりますが、今回はヒウラが後ろについていたから・・ということで許してあげましょう。
 その他、ドイガキの居眠りとそれを見たシノブ(坂上香織)のテックサンダーローリングや、シェパードでのカラオケ風潮騒画像などなど、いろんなギャグがますますテンポを良くしていましたな。

 んじゃ戦闘シーン・・・じゃなくて、コスモスとザランガのカラミシーンにツっこんでいきましょう。今回の作品がおもしろかった原因の一つがこのカラミシーン。変なエフェクトやCGは使わずに正統派の作り方をしています。実際の街とザランガとの合成もなかなか上手に合成されていましたし、コスモスのジャンプは実写を使っていますから、違和感なんてまったく存在しません。特撮の基本から外れない作り方というのが、私たちおじさん連中にはうれしいんですね。
 エフェクトといえば、陽炎効果はいい演出でしたね。シェパードを追いかけるザランガの足元が映ったときです。画像エフェクトというのは、こういう風に最低限でかつ効果的に使うってのが、王道なんじゃないでしょうか。
 ザランガの造形については、特にコメントの必要がありませんね。もともとクオリティの高いコスモス怪獣ですから、あまりツっこむところはありません。ただ、うれしかったのは、ザランガの子供がCGではなかったこと。いやぁ、この作品、手抜いてませんよ。

 細かいところにツっこんでいきましょう。冒頭シーンでのムサシ(杉浦太陽)、アヤノのことを「アヤノちゃん」って呼んでますが、先週の「カオスを倒す力」でのオペレーション中は「アヤノ隊員」と呼んでますよねぇ。うーん、どっちか統一して欲しいもんです。はっ、きっとコンディションレベルがイエローより高くなって初めて「隊員」扱いされるんだな。
 もうひとつ、アヤノが未確認物体を報告するシーン。他のメンバーは緊張感たっぷりなのに、なぜかムサシだけ「宇宙怪獣ですよ」とニコニコ顔。これも、放映開始当初のムサシの性格と合致していて、マルな部分ですね。

 このように、しっかりと過去の設定を踏まえていたり、絵の作りこみがしっかりしていたりと、この作品なかなかのデキだと思います。ただ、残念なのはエンディング。結局コスモスがザランガを海まで運んじゃいました。確かに、ムサシはコスモスに変身しているわけですから、フブキ一人で誘導ってのは無理かもしれませんが、できればコスモスはEYESの作戦を手伝うだけって感じに作って欲しかったな、と思います。

 最後は、さっき触れた冒頭のEYES司令室での出来事から。ムサシにおばさん呼ばわりされたアヤノの後ろに注目してください。あの時のシノブの表情、「ほーらアヤノだってあたしたちの仲間」ってな顔に見えたのは私だけでしょうか。


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